香港では株式の売却益は非課税なのか?
更新日:2026年8月
香港では株式の売却益に税金はかかるのでしょうか。取引の性質で課税か非課税かが決まります。資本性(capital nature)の取引は非課税です。

取引の性質で課税か非課税かが決まる。資本性(Capital nature)の取引は非課税。
香港では、株式の売却益は資本性の取引と判断された場合には非課税です。
資本性(capital nature)の取引 → 非課税
事業取引(revenue nature/トレーディング)→ 利得税の課税対象
どちらに当たるかは、取引の動機・保有期間・取引の頻度・保有割合・会計上の取扱いなどを総合して、税務局が案件ごとに判断します。
2024年からは、一定の保有期間と保有割合を満たせば、この事実認定を経ずに資本性とみなす制度も選択できるようになりました。
判定基準:Badges of Trade
税務局は「badges of trade(事業性の指標)」と呼ばれる複数の要素を総合して判断します。基本的に長期保有は資本性の取引と判断され、非課税となることが多いと言えます。
指標 | 資本性と判断されやすい | 事業性と判断されやすい |
同種取引の頻度 | 稀・単発 | 反復継続 |
保有期間 | 長期 | 短期 |
保有割合 | 高い | 低い |
取得・売却の理由 | 事業提携、経営権の取得、資金需要 | 値上がり益の実現 |
資金調達方法 | 自己資金・長期借入 | 短期借入 |
「何年持てば安全か」に基準はない
「長期保有というのは何年か?」とよく聞かれますが、税法では具体的な基準は示されていません。案件ごとに総合的に判断します。新しくできた後述の制度を使った場合は、非課税を確定させることが可能です。
2024年から:課税確実性向上スキーム
事実認定に依存する不確実性を緩和するため、香港は税務(改正)(適格持分保有者による処分収益)条例2023(2023年12月15日成立)により新しい制度を導入しました。
効果
要件を満たす持分の処分益は、badges of trade の判定を経ることなく資本性とみなされ、利得税の対象外となります。
主な要件
項目 | 内容 |
投資する側 | 法人・パートナーシップ・信託・ファンドなど、独立した財務諸表を作成する事業体(自然人は対象外、保険会社も除外) |
保有期間 | 処分日の直前24か月継続保有 |
保有割合 | 投資先の持分の15%以上(50%超の支配関係にある会社の保有分と合算可) |
対象期間 | 2024年1月1日以後の処分で、2023年4月1日以後に開始する課税年度の基準期間に生じた利益 |
主な除外
税務上、棚卸資産として扱われている持分
不動産売買業・不動産開発を行う会社、または資産の50%超が不動産である会社の非上場持分
国外源泉の処分益
このスキームは選択制
強制ではありません。税務申告書で書面により選択します。選択しなかった場合も不利益はなく、従来どおり badges of trade で判定されます。制度に有効期限はありません。
個人が売却した場合
判定の枠組みは法人と同じです。税務条例第14条の課税対象は「香港で事業を営む者」であり、この「者」には自然人が含まれます。個人だから非課税になるのではなく、事業として行っていないから非課税、という構造です。
したがって、個人が保有株式を売却して利益を得た場合、通常は資本性の取引として課税されません。一方、デイトレードのように売買を反復継続していれば、事業から生じた利益として利得税の対象となる余地があります。
ただし、個人の場合、次の2点が法人と異なります。
前述の税務確実性向上スキームは自然人には適用できないため、24か月・15%といった明確な基準は使えず、従来どおりの事実認定に委ねられます
事業と判定された場合の税率は、法人(8.25%/16.5%)ではなく非法人事業の税率(7.5%/15%)が適用されます
国外源泉の株式売却益は別途確認が必要
香港源泉ではない株式の売却益については、2023年から始まった国外源泉所得免税(FSIE)制度の確認が必要です。
多国籍企業グループの構成事業体が、国外源泉の株式処分益を香港で受領した場合、経済的実体要件や参加免除要件を満たさなければ、香港源泉とみなされて課税されます。日本の親会社を持つ香港子会社はこの制度の対象になり得ます。
簡単に言えば、香港側に実体があり経済的実体要件を満たしていれば、FSIEによる課税は生じません。実体要件を満たさない場合でも、参加免除要件により課税されないことがあります。
なお、FSIEの対象となった処分益は、資本性であっても課税されます。
▶ 詳しくは 国外源泉所得の免税制度 をご覧ください。
参考:印紙税
売却益が非課税であっても、香港法人株式の譲渡には印紙税がかかります。
税率は売主0.1%+買主0.1%=合計0.2%(2023年11月17日改定)で、譲渡対価と株式の市場価値のいずれか高い方が課税標準です。非上場株式では原則として純資産価額が基準となるため、最新の監査報告書や監査前の決算書の提出を求められます。
一定の関連法人間の譲渡については、印紙税条例(Cap. 117)第45条により免除申請が可能です。
よくある誤解
誤解 | 実際 |
香港は株式売却益が一律非課税 | 資本性と判断された場合のみ非課税 |
長期保有していれば必ず非課税 | 保有期間は指標の一つ |
個人なら絶対に課税されない | 売買を事業として行っていれば利得税の対象になり得る |
まとめ
香港では株式売却益は、資本性の取引と判断された場合に非課税となります。
判断は取引の動機・保有期間・取引の頻度・保有割合・会計処理などを総合して、税務局が案件ごとに行います。
法人の場合は、24か月・15%の保有要件を満たせば、事実認定を経ずに資本性とみなす課税確実性向上スキームを選択できます。個人は従来どおりの判断となります。
▶ 関連記事:香港では暗号資産(仮想通貨)の売却益は課税されるか?
本記事は2026年8月時点の法令・実務に基づいています。

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