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海外子会社への無利息貸付は認められる?移転価格・寄附金の論点【2026年版】

10月17日
読了時間: 4分

更新日:6 日前

日本の親会社から海外子会社へ貸付しているケースは多いかと思います。この貸付金の利率はどのように決めれば良いのでしょうか。無利息でも問題ないのでしょうか。



事例


日本法人A社は香港に100%子会社B社を持っています。数年前、B社の設備投資と運転資金として1億円を貸し付けました。利息は取っていません。


日本の親会社が香港子会社に1億円を無利息で貸し付けた場合の課税リスク

結論:無利息は原則として課税リスクがあります


100%子会社は「国外関連者」に該当するため、A社とB社の貸付は移転価格税制の対象です。A社が本来受け取るべき利息を受け取っていない場合、その利息相当額についてA社に課税される可能性があります。課税のルートは次の2つです。

  • 移転価格税制(措置法66条の4第1項):独立企業間の利率で利息を受け取ったものとして、差額が所得に加算されます。

  • 国外関連者に対する寄附金(措置法66条の4第3項):金銭を貸し付けて収益を計上していない場合、無償の経済的利益の供与として寄附金と認定されることがあります(移転価格事務運営要領3-20)。国外関連者への寄附金は全額損金不算入です。


例外:子会社の再建のための無利息貸付


子会社の倒産を防ぐためなど、合理的な再建計画に基づく無利息貸付で相当な理由があるものは、寄附金に該当しません(法人税基本通達9-4-2)。この場合は移転価格税制上も適正な取引として扱われます(移転価格事務運営要領3-7(1)注1)。

ただし「子会社だから」「資金繰りが苦しいから」だけでは足りません。再建計画の合理性を説明できる資料が必要です。


適正な利率の決め方(2022年改正後)


適正な利率とは、独立した第三者に同じ条件で貸し付けた場合の利率(独立企業間の利率)です。A社が第三者にも同様の条件で貸付を行っていれば、その利率を使います。


そうでない場合の考え方は、2022年6月の移転価格事務運営要領の改正で大きく変わりました。OECD移転価格ガイドラインに金融取引の章が追加されたことを受けたもので、2022年7月1日以後に開始する事業年度から適用されています。

 

改正前(〜2022年)

現行(2022年7月1日以後開始事業年度〜)

考え方

(1)借手の銀行借入利率 →(2)貸手の銀行借入利率 →(3)国債等の運用利率、の順に検討

取引ごとに「最も適切な方法」を選ぶ。順番の定めはなくなった

信用力

明示なし

借手の信用格付等で判断。グループに属することで上がる信用力(付随的便益)も加味する

市場金利

明示なし

比較対象取引がなければ、市場金利等で取引を想定してよい

銀行の見積り金利

明示なし

実際の取引に基づかないため「市場金利等」には該当しない

 実務上のポイントは、借手(B社)の信用力に応じた利率を設定することです。親会社の信用力だけで低い利率を付けたり、銀行から取った見積り金利だけを根拠にしたりする方法は、現行の指針とは合いません。もっとも、見積り金利を使っていることだけで直ちに課税されるわけではありません(同3-8(5)注)。


契約書は必ず作成する


親子間の貸付でも金銭消費貸借契約書を作成しましょう。通貨、貸付期間、返済期日、利率、利払方法を明記します。返済期日が決まっていない場合、税務調査では貸付の目的などから期間を合理的に算定されます(同3-7(1)注2)。

また、金利水準が上がっている局面では、何年も前に決めた利率が独立企業間の利率から乖離していることがあります。利率は定期的に見直しましょう。


香港子会社側の取扱い


  • 香港には利息に対する源泉税はありません。B社が利息を払っても、香港で源泉徴収は不要です。

  • 一方、香港では支払利息を損金にできるケースが限られています(税務条例16条(2))。日本の親会社は金融機関ではなく、受け取る利息も香港では課税されないため、親会社への支払利息は原則として損金になりません。

  • 例外は、香港子会社がグループ会社に資金を貸す「グループ内金融業務」を行っている場合です(同16条(2)(g))。ただし対象はグループ会社への転貸に使った部分の利息に限られ、自社の設備投資や運転資金に使った部分は対象外です。


つまり、日本では独立企業間の利息を受け取って課税される一方、香港ではその利息が損金にならず、グループ全体では利息に二重に税負担がかかる形になります。



これを避けたい場合は、香港子会社が銀行から借り入れ、親会社が保証を付ける方法も選択肢です。銀行からの借入金の利息は損金にできます(同16条(2)(d))。ただし、親会社の預金を担保にした借入は損金算入が認められないため注意が必要です(同16条(2A))。


まとめ


  • 海外子会社への無利息貸付は、利息相当額が日本で課税されるリスクがあります。

  • 例外は、合理的な再建計画に基づく無利息貸付などに限られます。

  • 利率は借手の信用力を踏まえて設定し、根拠資料と契約書を残しておきましょう。

  • 香港子会社が親会社に払う利息は原則として損金になりません。銀行借入+親会社保証も検討しましょう。


参考
  • 国税庁「移転価格事務運営要領 第3章 調査」3-7、3-8、3-20

  • 租税特別措置法66条の4

  • 法人税基本通達9-4-2

  • Inland Revenue Ordinance (Cap.112) section 16(2)


※2026年10月更新

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