香港のグローバルミニマム課税と香港ミニマム・トップアップ税(HKMTT)― 実効税率が15%未満でも課税されないケース
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更新日:2026年7月
香港でグローバルミニマム課税(HKMTT)の対象となるグループでも、香港子会社の実効税率(ETR)が15%を下回ったら必ずトップアップタックスが発生するわけではありません。一定の要件を満たせば、ETRが15%未満でもトップアップ税が「ゼロ」とみなされる除外規定・セーフハーバーが用意されています。本記事では、特に小規模な香港子会社に関係の深い規定を整理します。
香港のグローバルミニマム課税の概要はリンク先を参照

はじめに ― 「税額がゼロ」と「申告が不要」は別物
除外規定やセーフハーバーが適用されて税額がゼロになる場合でも、通知書(Top-up tax notification)やトップアップ税申告書(Top-up tax return)の提出義務が免除されるわけではありません。対象グループである以上、通知書(Top-up tax notification)やトップアップ税申告書(Top-up tax return)の提出は必要です。
1. デミニマス除外(小規模拠点向け・恒久措置)
香港の事業規模が小さい場合の代表的な救済が「デミニマス除外(適用免除基準)」です。次の2つの条件をいずれも満たす場合、香港の構成事業体に係るトップアップ税(HKMTTを含む)はゼロとみなされ、ETRの計算自体が不要になります。
<下記の2つとも満たせば免除>
香港におけるグループのGloBE収益 (注1) の3会計年度平均(当年度+直前2年度)が 1,000万ユーロ未満(約18億円/約8,900万HKD)
同期間の香港におけるGloBE所得の平均が損失、または 100万ユーロ未満(約1.8億円/約890万HKD)
<注意すべきポイント>
判定単位は「香港拠点全体」:この判定は香港というjurisdiction単位で、香港にある構成事業体(CE)を合算して行います。個々の会社ごとではありません。香港にグループ会社が2社あれば2社の合計で判定します。
3年平均で見る:単年度ではなく、当年度と直前2年度の平均で判定します。
年次の選択制:デミニマス除外(適用免除基準)を適用するかどうかを申告主体が各年度に選択(elect)します。
(注1) 香港のGloBE収益とは、香港に所在するグループ会社(構成事業体)の収益の合計です。香港内のグループ会社間の内部取引は、控除(消去)しません。また、出資(持分)に係る受取配当金や持分の売却損益等は除外します。不動産等の売却にかかる収益は出資にかかるものではないので除外しません。 |
2. 移行期CbCRセーフハーバー(時限措置)
制度導入初期の負担を軽減するための時限的なセーフハーバーです。2026年12月31日までに開始し、かつ2028年6月30日までに終了する会計年度が対象です。国別報告書(CbCレポート)と適格財務諸表のデータを用いて、以下の3テストのいずれか1つを満たせば、香港のトップアップ税はゼロとみなされます。
デミニマステスト:香港の総収益が 1,000万ユーロ未満、かつ 税引前利益(または損失)が 100万ユーロ未満
簡易ETRテスト:簡易的に計算したETRが基準値以上。基準値は年度により上昇し、15%(2023・2024年度)/16%(2025年度)/17%(2026年度)
通常利益テスト:香港の税引前利益が、香港の実体ベース所得除外(SBIE、下記4参照)相当額以下
なお、恒久措置であるデミニマス除外が「GloBE所得の3年平均」で判定するのに対し、こちらのデミニマステストは「CbCレポート上の単年度データ」で判定するという違いがあります。
3. QDMTT(HKMTT)セーフハーバー ― 「二重計算の免除」であって税額ゼロではない
HKMTTは適格国内トップアップ課税(QDMTT)として設計されているため、香港についてはグループレベルのGloBE計算(IIR/UTPR)を別途行う必要がなく、HKMTTの計算だけで完結します。
ただしこれは、上記1・2とは性質が異なります。あくまで計算の重複を省く(HKMTT計算のみでよい)という趣旨であり、HKMTTそのものが免除されるわけではありません。香港のETRが15%未満であればHKMTTは発生します。「税額が消える除外」と混同しないよう注意が必要です。
4. 実体ベース所得除外(SBIE)― 全額免除ではないが課税ベースを圧縮
上記のいずれにも当てはまらず実際にトップアップ税を計算する場合でも、実体ベース所得除外(SBIE)により課税対象が縮小します。SBIEは、香港における給与費用と有形資産の一定割合(恒久的には各5%。移行期は当初これより高い率から段階的に低減)を、トップアップ税の対象となるGloBE所得から控除する仕組みです。
つまり、香港に人員や資産といった実体を伴う事業ほど、トップアップ税は小さくなります。これは全額免除ではなく、課税ベースの圧縮である点が上記の除外・セーフハーバーとの違いです。
5. そもそも対象外となる主体
以下は制度の適用対象そのものから外れます(「対象だが税額ゼロ」ではなく「そもそも対象外」)。
政府機関、国際機関、非営利団体、年金基金
一定の投資ファンド・不動産投資ビークル(グループの最終親会社であるもの)
まとめ ― 香港子会社が「15%未満でも課税されない」主なルート
香港子会社の実効税率 (ETR) が15%を下回っても、上記の「1. デミニマス除外」か「2. 移行期CbCRセーフハーバー」に該当すればトップアップ税は生じません。
香港拠点全体が小規模(GloBE収益3年平均 1,000万ユーロ未満・GloBE所得3年平均 100万ユーロ未満)→ デミニマス除外
移行期間中(2026年開始年度まで)にCbCRセーフハーバーの3テストのいずれかを満たす
小規模な香港子会社(持株・サービス会社等)は、デミニマス除外に該当しやすい典型例です。ただし判定は香港拠点全体・3年平均・選択制であり、また税額がゼロでも通知・申告の手続きは残る点に留意が必要です。個別の該当性については、最新のIRDガイドラインを参照するか、専門家へご相談ください。

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