セーシェル法人とBVI法人の違い|税金・経済実体ルールを比較
セーシェルIBCとBVI法人は、どちらも「税金がかからないオフショア法人」として一括りにされがちです。しかし、2019年以降の経済実体ルールの導入で、両者に違いが出てきています。オフショア法人に香港などの子会社を持たせる場合は、セーシェル法人かBVI法人かによって結果が異なります。

税制の基本的な違い
BVIには法人所得税がありません。所得の種類や経済実体の有無にかかわらず、BVIで課税されることはありません。
セーシェルは「源泉地主義」の国です。セーシェル国内で得た所得だけが課税対象で、国外源泉所得は原則として非課税です。ただし、多国籍企業グループに属するIBCには例外があり、国外の所得でも課税されることがあります。
つまり、BVIは「税率ゼロの国」、セーシェルは「条件付きで国外所得が非課税になる国」です。
BVI:事業の種類で判断し、満たさなくても課税はない
BVIでは、会社が「関連事業」(持株事業、ファイナンス・リース事業、本社事業など9種類)を行っているかどうかによって、BVIに経済実体を持つ必要があるかが決まります。
関連事業を行っていない会社も含め、すべての会社が毎年、登録代理人を通じて経済実体の報告を行います。
株式を保有し、配当と譲渡益だけを得る「純粋持株会社」は、求められる実体が軽く、実務上は登録代理人のサービスで足ります。
子会社への貸付など、利息を得て融資を行う場合は、ファイナンス・リース事業に当たる可能性があります。その場合は、現地に人員・拠点を置き、意思決定を現地で行うなど、本格的な実体が必要です。
要件を満たさない場合は罰金(初回US$5,000〜20,000)が科されます。課税はされません。
セーシェル:多くの会社は経済実体ルールの対象外だが、海外に親会社・子会社があると複雑
セーシェルでは、IBCが「多国籍企業グループ」に属するかどうかによって、国外源泉所得が課税されるかが決まります。グループかどうかは会計上の連結支配関係で決まり、IBCに海外の親会社や子会社がある場合が典型です。
多国籍企業グループに属さないIBC
個人が保有し、子会社のない単独のIBCは経済実体ルールの対象外で、実体は必要ありません。国外源泉所得は従来どおり非課税です。
多国籍企業グループに属するIBC
所得の種類によって扱いが分かれます。
国外の配当・利息などの受動的所得
セーシェルに十分な実体がなければ課税されます。
子会社株式や不動産を保有するだけの場合(配当など)は、求められる実体が軽く、IBC法上の届出(年次報告・会計記録の提出など)を守り、登録代理人を置いていれば足ります。体制は現地の代理人に委託でき、長期保有の持株会社であれば、年次の届出を委託するだけでもよいとされています。
子会社への貸付の利息など、それ以外の受動的所得については、重要な意思決定をセーシェルでの取締役会で行うこと、リスクをセーシェルで負うこと、十分な人員・拠点・費用をセーシェルに持つことなど、本格的な実体が必要です。
国外での事業所得(トレーディング、サービスなど)
国外での事業所得は、IBC自身が海外に持つ恒久的施設(PE)に帰属すれば、セーシェルでは課税されません。海外にPEがない場合や、PEに帰属しない事業所得は課税されます。判定基準はPEの有無で、海外で実際に納税しているかどうかではありません。また、セーシェルに実体があっても非課税にはなりません。
注意が必要なのは、香港子会社を持つIBCが、自らも商社等のビジネスで売上を計上する構造です。個人が保有するIBCでも、香港などに子会社を持てば多国籍企業グループに当たります。IBCの事業が香港子会社などの事務所で管理されていて、それがIBC自身のPEと認められれば、セーシェルでは課税されませんが、その国(香港など)で課税される可能性があります。PEと認められなければ、セーシェルで課税されます。いずれにしても、「オフショア法人だから非課税」という前提は成り立ちにくくなっています。
課税される場合は、セーシェルの事業税(SCR 1,000,000以下の部分は15%、超過部分は25%)がかかります。セーシェルは申告納税制度なので、国外源泉所得が課税されるかどうか(多国籍企業グループに当たるか、海外にPEがあるか、十分な経済実体があるか)は、会社自身が判断して申告する必要があります。課税対象と判断した場合は、セーシェルで事業税の申告・納税が必要です。

ケース別の比較
ケース | セーシェル | BVI |
個人が保有する単体の貿易会社やコンサルティング会社 | 経済実体の対応不要 | 経済実体は不要(関連事業でないため) |
香港子会社の株式だけを持つ持株会社 | 登録代理人を置き、届出を守っていれば実体は足り、配当は非課税 | 登録代理人のサービスで実体は足りる。配当は課税なし |
子会社に貸付も行う持株会社 | セーシェルに本格的な実体(人員・拠点・意思決定)が必要。なければ利息に課税 | 貸付がファイナンス・リース事業に当たると、BVIに本格的な実体が必要。なくても課税はなく罰金 |
香港子会社を持ち、自らも事業で売上を計上する会社 | IBCの海外PEに帰属しなければ、事業所得に課税 | BVIでは課税なし |
親会社や子会社を持たない単独の会社として設立する場合、セーシェルとBVIの違いはほとんどありません。
日本居住者が株主の場合
どちらの国の法人でも、日本居住者やその関係者が株主の場合は、日本のタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の対象となる可能性があります。セーシェルやBVIで課税されないことと、日本で課税されないことは別の問題です。詳しくは「タックスヘイブン対策税制の概要」をご覧ください。
まとめ
セーシェルとBVIは同じように語られがちですが、経済実体ルールの考え方は大きく異なります。
BVIは、関連事業を行う会社に経済実体を求めますが、満たさない場合は罰金で、BVIで課税されることはありません。
セーシェルは、多国籍企業グループに属さない会社には経済実体は不要ですが、海外に親会社・子会社があると所得の種類ごとに判断が分かれ、セーシェルでの課税リスクが生じます。



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