海外在住の日本不動産オーナーにも個人事業税?総務省が2027年度税制改正で検討
公開日:2026年11月2日
2026年10月31日、日本経済新聞が「海外居住者の国内不動産、賃貸事業に課税 公平性確保へ総務省検討」と報じました。香港など海外に住みながら日本で賃貸物件を持っている方には気になる内容です。
まだ検討段階で何も決まっていません。現状、個人事業税が不動産貸付業・駐車場業として課税されるのは、認定基準(アパート10室以上、駐車場10台以上など)を満たす場合だけです。この基準が海外居住者にもそのまま適用されるのであれば、マンション1室〜数室を貸している方は対象になりません。
本記事では、現在どの税金がかかっていて、どの税金がかかっていないのか、改正された場合にどう変わると想定されるのかを整理します。

報道の要点
総務省が、日本国内で不動産賃貸業や駐車場業を営む海外居住者の所得に個人事業税を課税する方向で検討に入った
政府・与党の2027年度(令和9年度)税制改正大綱への反映をめざす
現在は、日本国内に事務所や住所がない海外居住者に対して、都道府県は個人事業税を課税できない
判断の基準は国籍ではなく住所です。外国人投資家だけでなく、海外赴任中や海外移住した日本人も同じ扱いになります。
海外在住オーナーにかかる税金・かからない税金(現行)
日本の不動産を貸している海外居住者に関係する主な税金は次のとおりです。
税目 | 課税する機関 | 課税の基準 | 海外居住者 |
所得税 | 国(税務署) | 国内源泉所得 | 課税される(源泉徴収+確定申告) |
固定資産税 | 市町村(東京23区は都) | 1月1日時点の所有者 | 課税される |
住民税 | 都道府県・市町村 | 1月1日時点の住所 | 課税されない |
個人事業税 | 都道府県 | 事務所・事業所(なければ住所等) | 課税されない ← 今回の検討対象 |
所得税は、日本の不動産の賃貸収入が国内源泉所得にあたるため、海外居住者でも課税されます。借主が法人の場合などは賃料の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算します。固定資産税も不動産の所在地で課税されるため、住所に関係なくかかります。
一方、住民税と個人事業税は住所や事務所を基準にする税金です。そのため、日本に住所も事務所もない海外居住者には、課税できる自治体がありません。今回の検討はこのうち個人事業税が対象です。
個人事業税とは
個人事業税は、法律で定められた業種(法定業種)を営む個人に都道府県が課す税金です。不動産貸付業と駐車場業は第1種事業にあたり、税率は5%です。
税額の計算
税額 =(不動産所得 + 青色申告特別控除額 − 事業主控除290万円)× 5%
個人事業税には青色申告特別控除が適用されないため、所得税の控除前の所得金額をもとに計算します。
課税されるのは一定規模以上の賃貸だけ
不動産を貸していれば必ず課税されるわけではありません。貸付けの規模が都道府県の認定基準を満たす場合に限り、不動産貸付業・駐車場業として課税されます。東京都などの主な基準は次のとおりです。
区分 | 認定基準(主なもの) |
住宅(一戸建) | 10棟以上 |
住宅(マンション・アパートの部屋) | 10室以上 |
青空駐車場 | 駐車可能台数10台以上 |
建物・機械式の駐車場 | 台数にかかわらず駐車場業 |
※ 上記以外にも、土地の貸付けや住宅以外の建物などの基準があり、都道府県ごとに細かな違いがあります。
基準に届かなければ、家賃収入の金額にかかわらず個人事業税はかかりません。
申告と納付
所得税の確定申告をしていれば、個人事業税の申告を別にする必要は原則としてありません。都道府県が所得税の申告内容をもとに税額を計算し、納税通知書を送ります。納付は通常、8月と11月の2回です。
改正された場合に影響を受ける人・受けない人
改正後も、個人事業税の現行の認定基準と計算方法がそのまま使われると仮定すると、次のようになります。
影響を受けない可能性が高い人
マンションを1室〜数室だけ貸している方(家賃が高くても、10室未満なら対象外)
認定基準を満たしていても、所得(青色申告特別控除前)が290万円以下の方
影響を受ける可能性がある人
アパート1棟(10室以上)や戸建て10棟以上などを貸している方
青空駐車場を10台以上貸している方
税額の目安は次のとおりです。
所得(青色申告特別控除前) | 個人事業税(年額) |
500万円 | 10.5万円 |
1,000万円 | 35.5万円 |
3,000万円 | 135.5万円 |
なお、個人事業税は所得税の計算上、必要経費になります。
すでに所得税を申告している方は、追加の作業負担は少ない見込み
海外居住者で賃貸収入がある方は、すでに納税管理人を選任して所得税の確定申告をしているはずです。個人事業税は所得税の申告をもとに課税されるため、改正後も新たな申告作業はほとんど生じないと考えられます。
ただし、納税管理人の届出は税金ごとに提出先が分かれています(所得税は税務署、固定資産税は市町村)。個人事業税の場合は、都道府県への届出が別に必要になる可能性があります。具体的な手続きは、改正内容が決まってから確認が必要です。
今後のスケジュール(見込み)
時期 | 内容 |
2026年12月 | 与党の2027年度税制改正大綱(盛り込まれるかどうか) |
2027年春 | 大綱に入った場合、地方税法の改正案が国会へ |
2028年8月頃 | 2027年分の所得から適用された場合、最初の納付時期 |
※ 適用時期は報道時点で示されていません。上の表は、現行の課税時期を前提にした見込みです。
今後確認しておきたいこと
貸している物件の棟数・室数・駐車台数が認定基準に届くかどうか
所得税の確定申告と納税管理人の選任が適切に行われているか
12月の税制改正大綱に盛り込まれたかどうか
まとめ
海外居住者への個人事業税の課税は、2026年11月2日時点では総務省の検討段階
所得税と固定資産税は、海外居住者にも以前から課税されている
現行基準が適用されれば、対象はアパート10室以上などの事業的規模の大家に限られる
すでに所得税を申告している方の追加の作業は小さい見込み
コラム:そもそも個人事業税とは?個人事業税は、個人事業主の事業の儲けにかかる都道府県の税金です。会社にかかる法人事業税の個人版にあたり、所得税や住民税とは別に課税されます。
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参考資料
日本経済新聞「海外居住者の国内不動産、賃貸事業に課税 公平性確保へ総務省検討」(2026年10月31日)
東京都主税局「個人事業税」(不動産貸付業・駐車場業の認定基準)
国税庁タックスアンサー No.2880「非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき」
地方税法(個人事業税)



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