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Active NFEとPassive NFEの違い|CRSの法人分類と判定フローチャート

10 分前
読了時間: 6分

海外の銀行で法人口座を開くと、CRS(共通報告基準)の自己申告書で「Active NFE」か「Passive NFE」かという質問があります。

この分類によって、株主など法人を支配する個人の情報が、その人の居住地国に報告されるかどうかが決まります。日本居住者が香港やBVIの法人を持つ場合、日本の国税庁に情報が届くかどうかの分かれ目になります。

本記事では、両者の違いと判定基準を整理し、判定の流れをフローチャートにまとめます。



CRSとは

CRS(共通報告基準)は、金融口座の情報を各国の税務当局の間で自動的に交換するための、OECDが定めた国際基準です。各国はCRSを自国の法律に取り込み、金融機関に次の義務を課しています。

  • 口座保有者の税務上の居住地国を確認する

  • 居住地国がCRSの報告対象国であれば、口座の情報を自国の税務当局に報告する

金融機関から報告を受けた税務当局は、年に一度、口座保有者の居住地国の税務当局と情報を交換します。

CRSの情報の流れ · 4つの主体

金融機関が口座保有者の国に直接報告するのではなく、自国の税務当局を経由して情報が届きます。

口座保有者が法人の場合、金融機関は法人自体の居住地国を確認します。さらに法人の種類によっては、その法人を支配する個人の居住地国も確認し報告の対象にします。どちらに当たるかを決めるのが、次に説明するNFEの分類です。


NFEとは

CRSでは、金融機関が法人の口座を開く際、口座名義の法人を次のように分類します。

  • 金融機関(Financial Institution, FI):銀行、証券会社、保険会社、投資事業体など

  • NFE(Non-Financial Entity):金融機関ではない法人


NFEはさらに、Active NFEとPassive NFEに分かれます。一般的な事業会社や資産管理会社は、いずれもNFEのどちらかに当たります。

分類は、法人が提出する自己申告書(Self-Certification)に基づいて行われます。金融機関は、KYCで集めた情報と申告内容に矛盾がないかを確認します。分類は事実で決まるもので、法人が自由に選べるものではありません。


Active NFEとPassive NFEの違い


Active NFE

Passive NFE

どんな法人か

事業を行っている法人など

Active NFEに当たらない法人

典型例

商社、製造業、サービス業、事業子会社を持つ持株会社

預金・株式・債券などを保有する資産管理会社

金融機関が確認する相手

法人のみ

法人と、その支配者(Controlling Persons)

報告される情報

法人の口座情報(法人の居住地国へ)

法人の口座情報に加え、支配者の情報(支配者の居住地国へ)


判定基準:50%基準

事業会社がActive NFEになるには、前暦年(または適切な報告期間)について、次の2つを両方満たす必要があります。

  • 収入基準:総収入のうち、受動的所得が50%未満

  • 資産基準:総資産のうち、受動的所得を生む資産(またはそのために保有する資産)が50%未満

どちらか一方でも50%以上であれば、原則としてPassive NFEです。ただし、次で挙げる類型に当たる場合は、Active NFEになります。


受動的所得の範囲

受動的所得の主なものは次のとおりです。

  • 配当

  • 利子、およびそれに準ずる所得

  • 賃料・ロイヤルティ(法人の従業員が少なくとも一部関与して能動的に営む事業から生じるものを除く)

  • 年金

  • 受動的所得を生む資産の譲渡益

  • 商品取引・為替・スワップなどの純利益


50%基準以外でActive NFEになる類型

受動的所得や受動的資産が50%以上でも、次のいずれかに当たればActive NFEになります。

  • 上場会社とその関連法人

  • 政府機関、国際機関、中央銀行、およびそれらが全額保有する法人

  • 金融機関以外の事業子会社の株式を保有・管理する持株会社(投資ファンドのように投資目的で保有するものを除く)

  • 設立から24か月以内で、まだ事業を開始していないが、金融機関以外の事業を営むために資産へ投資している法人

  • 清算中・再編中の法人で、過去5年間に金融機関でなかったもの

  • 金融機関以外のグループ会社のための財務・ヘッジ会社

  • 非営利団体

たとえば、香港の事業子会社を保有するBVI持株会社は、収入が子会社からの配当中心でも、持株会社の類型でActive NFEになり得ます。


株式・賃貸不動産の扱い

株式や賃貸不動産が資産の50%以上を占める場合、原則としてPassive NFEになります。ただし、それぞれ例外があります。

株式は、配当や譲渡益を生むので、原則として受動的所得を生む資産です。ただし、金融機関ではない事業子会社の株式を保有・管理する持株会社は、50%基準とは別の類型でActive NFEになり得ます(次の章を参照)。

賃貸不動産は、賃料が原則として受動的所得なので、受動的所得を生む資産になります。ただし、法人の従業員が少なくとも一部関与して能動的に営む事業から生じる賃料は、受動的所得から除かれます。物件を保有して管理会社に任せているだけなら、賃料は受動的所得です。

なお、資産基準を満たしていても、前暦年の収入の50%以上が配当や賃料であれば、収入基準でPassive NFEになります。


判定フローチャート

ここまでの基準を、判定の流れにまとめると次のようになります。


金融機関に当たらず、50%基準も満たさず、例外の類型にも当たらない法人がPassive NFEです。



分類で何が変わるか

Passive NFEとActive NFEでは報告される情報が変わります。


Passive NFEの場合、金融機関は法人の情報に加えて、その支配者(Controlling Persons)の居住地国も確認します。支配者は、口座がある国のAML基準で特定されます。香港の金融機関であれば、持分の25%超を保有する者などが該当します。株主全員が対象になるわけではありません。支配者が報告対象国の居住者であれば、「CRSとは」で説明した流れで、その居住地国の当局に情報が届きます。

報告される主な情報は次のとおりです。

  • 支配者の氏名・住所・TIN

  • 法人口座の残高

  • 利子・配当の総額、売却代金の総額

法人の財務諸表や事業内容は報告されません。


Active NFEの場合、支配者の情報は報告されません。報告されるのは法人自体の情報と口座の情報で、法人の税務上の居住地国が、口座がある国から見て報告対象国である場合に限られます。

報告される主な情報は次のとおりです。

  • 法人の名称、住所、居住地国、TIN

  • 口座番号と、金融機関の名称

  • 年末時点の口座残高

  • 利子・配当などの総額、売却代金の総額(口座の種類による)

たとえば、BVI法人が香港の銀行に口座を持つ場合、BVIが香港にとって報告対象国であれば、香港の税務局からBVIの当局に情報が届きます。

一方、香港の法人が香港の銀行に口座を持つ場合のように、法人の居住地国と口座がある国が同じであれば、CRSの報告対象にはなりません。CRSは、外国の居住者が持つ口座の情報を交換する仕組みだからです。

つまり、日本居住者が支配する法人がPassive NFEであれば、その日本居住者の情報が日本の国税庁に届きます。Active NFEであれば報告されるのは法人の情報だけで、法人の居住地国が日本でない限り、日本の国税庁には届きません。


まとめ

  • NFEは金融機関ではない法人で、Active NFEとPassive NFEに分かれる

  • 事業会社がActive NFEになるには、受動的所得と受動的資産がいずれも50%未満であることが必要

  • 50%基準を満たさなくても、上場会社、事業持株会社、設立24か月以内の法人などはActive NFEになる

  • Passive NFEなら支配者の情報が支配者の居住地国に報告され、Active NFEなら報告されない

  • 分類は事実で決まり、法人が自由に選べるものではない


参考資料

 
 
 

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