レアアースとは?用途・ネオジム磁石・供給の仕組みを整理
輸出規制のニュースでよく目にするレアアース。何に使われ、供給はどこに偏っているのかを、公的機関などの資料に基づいて整理します。中国の輸出規制の流れと日本への影響は、別記事「中国のレアアース輸出規制の流れ|日本への影響を整理」でまとめています。

レアアースとは
レアアース(希土類元素)は、スカンジウム、イットリウムとランタノイド15元素の計17元素の総称です。エネルギー、輸送、AI関連の技術から航空宇宙、医療、防衛まで、幅広い分野で使われています(IEA)。
「レア」といっても、地殻中の量が極端に少ないわけではありません。採掘に見合う濃度の鉱床が限られ、性質の似た元素同士を分離するのが難しいことが「レア」の理由です(IEA)。
17元素は、原子量によって軽希土 (けいきど) と重希土 (じゅうきど) に分けるのが一般的です。ただし、スカンジウム、イットリウム、ガドリニウム、ユウロピウムの分類は資料によって異なります(IEA)。この記事で主に扱うのは次の元素です。
軽希土:ネオジム、プラセオジム、セリウム、ランタン
重希土:ジスプロシウム、テルビウム
磁石に使う重希土の採掘は、中国とミャンマーで世界の約83%を占めます(IEA)。

【コラム】レアメタルとレアアースの違い「レアメタル」と「レアアース」は混同されやすい言葉ですが、同じものではありません。 レアメタルは、鉄やアルミニウム、銅・鉛・亜鉛、金・銀などの一般的な金属を除いた、ハイテク産業に欠かせない希少な金属の総称です。経済産業省は31鉱種をレアメタルに指定しており、リチウム、コバルト、タングステン、ガリウムなどが含まれます。 レアアース(希土類)は、この31鉱種のうちの1つです。スカンジウム、イットリウムとランタノイド15元素の計17元素を、まとめて1鉱種として数えます(産業技術総合研究所『地質ニュース』2010年)。 つまり、レアアースはレアメタルの一部です。 |
何に使われるのか
用途の中心はネオジム磁石です。元素ごとの主な使い道は次のとおりです。

ネオジム磁石が、レアアースの用途の中心です。
量と金額の割合
永久磁石は、量ではレアアース消費の約50%ですが、金額では約95%を占めます。
用途 | 量の割合 | 金額の割合 |
永久磁石(主にネオジム磁石) | 約50% | 約95% |
永久磁石以外(触媒、研磨剤・ガラス、合金など) | 約50% | 約5% |
量・金額とも、IEA(国際エネルギー機関)の2026年の報告書によります。磁石以外の欄は、磁石の数字の残りです。
量と金額で差が出るのは、元素によって価格が大きく違うからです。IEAは、ランタンやセリウムを低価格の元素としており、量の割に市場規模に占める割合は小さいと説明しています。
ネオジム磁石と重希土
ネオジム磁石の主成分は軽希土のネオジム・プラセオジムと鉄・ホウ素です。重希土のジスプロシウムやテルビウムは、性能を高めるために必要に応じて加える添加材です(IEA)。
ネオジム磁石は佐川眞人氏が発明し、1982年に住友特殊金属が特許を出願しました(物質・材料研究機構)。産業用で最も強力な永久磁石の一つで、EV、風力発電、産業用モーター、AIデータセンターなどを支えています(IEA)。
ネオジム磁石の弱点は熱です。磁力を保つ力(保磁力)は温度が上がると下がり、通常のネオジム磁石は耐熱温度が比較的低いため、ハイブリッド車の駆動用モーターなどでは、耐熱性に効果のあるジスプロシウムを8%程度加えています(科学技術振興機構・物質・材料研究機構、2014年)。IEAも、ジスプロシウムとテルビウムが保磁力を高め、高温でも磁力を保てるようにすると説明しています。
2025年4月に中国が輸出を許可制にした7元素には、このジスプロシウムとテルビウムが含まれています(商務部・海関総署公告2025年第18号)。
採掘・精製による環境問題
IEAも指摘するように、レアアースは採掘と精製の段階で大きな環境負荷を生みます。
放射性物質:レアアースの鉱石にはトリウムやウランが伴うことが多く、採掘や処理の過程で鉱滓や残渣に濃縮される(IEA)
化学処理:精製工程では大気への排出や有害な汚泥が生じ、周辺住民の健康への影響も指摘されている(IEA)
原位置浸出:イオン吸着型の粘土鉱床では、薬液で地中から溶かし出す方法が主流。管理が不十分だと、酸性の浸出液や放射性の鉱滓が水域や土壌を汚染する(IEA)
鉱滓池:内モンゴル包頭市の精製施設の周辺には廃液を溜めた巨大な人工池があり、2015年にBBCが報じた(BBC)
中国以外でも同じ問題があります。豪州Lynasがマレーシアのクアンタンで運営する精製工場では、低レベルの放射性物質を含む廃棄物の扱いが、操業許可の更新条件をめぐって政治問題になりました(Malay Mail、2019年)。
供給はどこに集中しているのか
IEAによると2024年、中国は磁石用レアアース(ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウム)の採掘の60%、精製の91%を占めます。焼結(しょうけつ)磁石の生産では94%で、2005年の約50%から大きく伸びました。採掘よりも精製と磁石製造への集中が極端です。
中国は2025年以降、重希土を中心にレアアースの輸出を許可制にしています。これまでの規制の流れと日本への影響は、別記事で整理しています。
中国以外で供給を増やしにくい理由について、IEAは、中国以外のプロジェクトは規模の小ささ、原材料価格の高さ、許認可の複雑さ、より厳しい環境規制などからコストが高くなりやすいと指摘しています(IEA)。
重希土では、隣国ミャンマーが世界最大の供給源です。英国のNGOグローバル・ウィットネスの2024年の調査によると、ミャンマーから中国への重希土酸化物の輸入は、2021年の1万9,500トンから2023年には4万1,700トンと倍以上に増えました(Global Witness)。
同団体は次の点も指摘しています(Global Witness)。
ミャンマーの重希土は、主に中国の精製業者に送られている
採掘が最も拡大したカチン特別区第1区は、国軍系の民兵組織が支配している
同特別区のいくつかの河川で、強い酸性とヒ素濃度の上昇が確認された
まとめ
レアアースはレアメタル31鉱種のうちの1つ。用途の中心はネオジム磁石
永久磁石は、量ではレアアース消費の約50%、金額では約95%を占める
ネオジム磁石の主成分は軽希土。モーターなど高温で使う用途では、耐熱性を高めるために重希土を加える
磁石用の重希土の採掘は、中国とミャンマーで約83%を占める。磁石用レアアースの精製は中国が91%、焼結磁石の生産は94%を占める



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