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香港就労ビザが必要なケースとは|出張ベースの業務はどこまで可能か

  • 1 日前
  • 読了時間: 5分

香港に出張して仕事をする場合、就労ビザ(ワーキングビザ)は必要でしょうか。

「短期の出張だから大丈夫」という理解が広く共有されていますが、香港の法令ではそのような日数基準を採用していません。判断基準は滞在日数ではなく、香港で何をするかです。



ビザなしで来港の日本国籍者のステータスは「訪問者」

 日本のパスポート保持者は、ビザなしで香港に入境し、90日間滞在できます。このとき付与されるステータスは訪問者(visitor)です。

 入境規例(Immigration Regulations, Cap.115A)第2(1)条は、訪問者としての在留条件を次のとおり定めています。

  1. 有償・無償を問わず、雇用に従事しないこと

  2. いかなる事業も設立し、または参加しないこと

  3. 学校・大学その他の教育機関の学生とならないこと

 在留条件に違反した者は、入境條例第41条により、最高罰金5万香港ドルおよび禁固2年に処せられます。

 ここで重要なのは、条文が「有償・無償を問わず」と明記している点です。日本の会社から給与を受け取り、香港では一切報酬を受けていない場合であっても、香港で雇用に従事したと評価されれば違反になります。


就労ビザなしで認められる業務活動

入境事務處は「Permissible Activities for Visitors(訪問者に認められる活動)」として、訪問者が行える業務関連活動を公表しています。


ビジネス関連活動(6項目)

訪問者ステータスで認められる活動

契約の締結、入札の提出

物品・設備の設置または梱包の検査・監督

展示会・見本市への参加(一般公衆への直接販売、役務提供、ブース設営を除く)

損害賠償その他の民事手続の処理

製品オリエンテーションへの参加

短期セミナーその他ビジネスミーティングへの出席

 なお入境事務處のFAQは、契約締結の過程における製品・サービスのプレゼンテーション、価格交渉、契約書への署名が認められることを明示しています。


講演・プレゼンテーション

上記に加え、訪問者は次の条件のもとで講演・プレゼンテーションを行うことができます。

  • 講演に対する報酬を受けないこと(イベントに関連する宿泊費・渡航費・食事等の提供、またはその実費精算は認められます)

  • 各滞在期間中、参加開始日から起算して連続14暦日以内であること(イベント数の上限はありません)

主催者が参加費を徴収していても、登壇者本人が報酬を受けなければ問題ありません。


ケース別の判断
商談・契約締結のための出張 → 就労ビザ不要

日本の会社に所属したまま、香港の取引先との商談、価格交渉、契約書の締結のために出張する場合は、上記リストに該当します。就労ビザは不要です。


展示会への出展 → 活動内容によって分かれる

ここが最も誤解の多い領域です。判断の分岐点は「販売するかどうか」ではなく、誰に売るかです。許可活動リストが除外しているのは「一般公衆への直接販売」です。


香港貿易発展局(HKTDC)が出展者向けに配布している通達も、出展者の活動が小売販売を伴わないプロモーションに集中している場合は就労許可が不要であり、域外からの出展者が小売販売活動に従事する場合は就労許可が必要である、と説明しています。


したがって、

  • B2Bのトレードフェア(バイヤー登録制、一般公衆非開放)では、買い手が事業者です。商品説明、デモンストレーション、価格交渉、受注、契約締結のいずれも「一般公衆への直接販売」に当たらないため、出張者が対応して問題ありません

  • 消費者向け展示会や公衆開放日では買い手が一般公衆ですので、訪問者ステータスでは行えません。

 入境事務処のFAQは、この場合には「合法的に雇用可能な者(lawfully employable persons)」を雇用すべきとしています。

 実務上は、現地代理店・輸入業者のスタッフや現地採用のイベント要員がレジと現金受領を担当し、日本からの出張者は商品説明とブランド紹介に専念する、という役割分担が正しい構成になります。

 ただし、プロモーションと販売の境界には曖昧な領域が残ります。出張者が商品を実演し、購入希望者は現地スタッフが対応するといった形態がどこまで許容されるかについて、入境事務処の公表ガイダンスはありません。判断に迷う場合は、事前に入境事務処へ照会するのが確実です。

 なお、ブースの設営作業も訪問者には認められていません(設営の監督は可能です)。商品の梱包など一般公衆への役務提供も同様に認められていません。


香港法人の取締役として来港 → 実態次第

 日本に居住したまま香港法人の取締役を務め、取締役会出席のために来港する場合、「ビジネスミーティングへの出席」として整理するのが一般的です。

 ただし、香港で日常的な業務執行を行う場合は、在留条件②の「事業への参加」に抵触するリスクがあります。この点について入境事務處の明文ガイダンスは存在しないため、来港頻度と実際の業務内容を踏まえた個別判断が必要です。

 HKTDCの通達も「香港において日常的な事業運営または投資活動に従事しようとする者は就労許可を申請しなければならない」と述べており、日常的な業務執行が分岐点であることが示唆されています。


香港子会社での実務従事・常駐 → 就労ビザが必要

 日本の親会社から派遣され、香港子会社で継続的に業務を行う場合は就労ビザが必要です。滞在が短期間であっても、香港で役務そのものを提供する以上、訪問者ステータスでは対応できません。


判断の目安

行為

訪問者ステータス

商談・価格交渉・受注・契約締結

製品説明・デモンストレーション

設置・梱包作業の検査・監督

無報酬の講演(連続14日以内)

一般公衆への直接販売・現金受領

不可

一般公衆への役務提供

不可

ブース設営作業

不可

香港法人での日常的な業務執行

不可


まとめ
  • 香港の就労ビザの要否は、滞在日数ではなく活動内容で決まります。

  • 商談、価格交渉、契約締結、受注、製品説明は、訪問者ステータスで行えます。

  • 訪問者ステータスでは一般公衆への直接販売、役務提供、ブース設営は行えません。判断の分岐点は相手方が一般公衆か事業者かです。

  • B2Bのトレードフェアへの出展は、通常は訪問者ステータスの範囲内です。

  • 香港法人で日常的な業務執行を行う場合は、就労ビザが必要です。

  • 違反した場合、最高罰金5万香港ドルおよび禁固2年の刑事罰の対象となります。


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の判断にあたっては、具体的な事実関係に基づく専門家の確認をお勧めします。

 

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