top of page

マカオで会社設立|会社形態・必要書類・税制まで徹底解説【2026年版】

  • 2 日前
  • 読了時間: 12分

更新日:1 日前

香港の隣に位置するマカオは、低税率かつシンプルな税制、外貨管理がない自由な資金移動、アジア進出を検討する日系企業にとって選択肢のひとつとなり得る地域です。

一方で、マカオの会社設立は香港ほど情報が整理されておらず、ネット上には実態と異なる古い情報も少なくありません。税制は近年大きく動いており、2021年にはオフショア会社制度が廃止され、さらに2026年1月からは新しい「税法典(Tax Code)」が施行されて属地主義課税へ移行しました。これら最新の制度を踏まえて、マカオで会社を設立する際の手順・会社形態・必要書類・税制を整理します。



マカオで会社を設立する主なメリット

  • 低い法人税率 — 利益に対する所得補充税(法人所得税に相当)は最高でも12%。経費として認められる範囲も比較的広い。

  • シンプルな税制 — 付加価値税(VAT・消費税)がない。

  • 外貨管理がない — 中国本土と異なり、資金の移動・調達が自由に行える。

  • 外資規制が少ない — 基本的に外国人投資家の出資比率や事業に大きな制限がなく、株主・取締役の国籍も問われない。

  • 多言語環境 — 公用語は中国語・ポルトガル語だが、公式文書は英語表記でも扱われ、ビジネス上は中国語・英語が通用する。


 注意:「オフショア会社制度」と「域外所得の非課税」は別物です

かつてマカオには、海外取引に限定したオフショア会社(MOC:Macau Offshore Company)に対して各種税が免除される制度がありました。これはOECDの国際課税基準(税の透明性)への対応として、2021年1月1日をもって全面廃止されています。一方、後述する2026年からの「属地主義による域外所得の非課税」は、通常の法人に適用される課税原則であり、廃止されたMOC制度とは全く別のものです。MOC制度(オフショア会社の免税)を前提とした古い情報には注意してください。


マカオの会社形態(種類)

マカオ商法典に基づき、主に以下の会社形態があります。実務上、外国人投資家がもっとも多く利用するのは有限会社(有限公司)一人有限会社です。

会社形態

株主人数

最低登録資本金

無限会社

2名以上

要件なし

一般二合会社(合資)

無限責任1名以上+有限責任1名以上

要件なし

株式二合会社

無限責任1名以上+有限責任3名以上

MOP 1,000,000

有限会社(有限公司 / Lda.)

2〜30名

MOP 25,000

一人有限会社

1名

MOP 25,000

株式有限会社(股份有限公司 / S.A.)

3名以上

MOP 1,000,000

 

有限会社(有限公司)と一人有限会社の比較

外国人投資家の進出でもっとも多く使われるのが、この2つの有限責任会社です。両者の法的な枠組みはほぼ同じで、最大の違いは出資者(株主)が複数か1名かという点にあります。なお、大規模事業や将来の上場を視野に入れる場合は、株式有限会社(S.A./最低資本金 MOP 1,000,000)が選択肢になります。

項目

有限会社(有限公司 / Lda.)

一人有限会社(一人有限公司 / Sociedade Unipessoal Lda.)

出資者(株主)の数

2〜30名

1名のみ

出資者の種類

個人・法人いずれも可

個人・法人いずれも可

最低登録資本金

MOP 25,000

MOP 25,000

責任の範囲

出資額を限度とする有限責任

出資額を限度とする有限責任

取締役(管理者)

1名以上(株主が兼任可)

1名以上(株主本人が兼任可)

商号の末尾

有限公司

Limitada(Lda.)

一人有限公司

Sociedade Unipessoal Lda.

またはUnipessoal Lda.

主な想定用途

複数出資者・合弁(JV)向け

日本の親会社が100%出資する子会社など、単独出資向け

 

実務上のポイントは次のとおりです。

  • 日系の現地子会社には一人有限会社が向く — 日本の親会社1社が全額出資して現地法人を設けるケースでは、一人有限会社(一人有限公司)が自然な選択になります。

  • 出資者が増減すると形態が変わる — 一人有限会社に新たな出資者が加わると有限会社(有限公司)へ、逆に有限会社が1名になると一人有限会社へと、出資者数に応じて形態・商号の変更手続きが必要になります。



会社設立の手順

マカオでの会社設立は、おおむね次の流れで進みます。各機関での手続きや署名認証が必要なため、香港よりも時間がかかる点に留意してください。

以下の手順の大部分は設立代行(会計事務所・現地弁護士)が代行します。依頼者側で行うのは、会社内容の決定、本人確認書類の提出、書類への署名(必要に応じて委任状の公証)程度で、この点は香港の会社設立と大きく変わりません。香港との違いは、手続きが各機関を順に経由するため時間がかかる(登記まで3〜4週間程度)ことと、定款の公証など現地固有の工程がある点です。


ステップ1:商号(会社名)の予約・確認

設立する会社名を中国語またはポルトガル語で決め、商業・動産登記局に類似商号の調査と商号予約を申請します。他社と同一の名称や、公序良俗に反する名称は使用できません。英語表記を併記したい場合は、中国語・ポルトガル語表記に追加して申請します。


ステップ2:会社内容の決定と定款の作成

会社形態、登録資本金、株主・取締役、本店所在地、事業内容(事業範囲)を決定し、定款を作成します。事業範囲は商号予約で申請した内容と一致させる必要があります。なお、許認可が必要な規制業種では、別途、事業計画等の提出を求められる場合があります(通常の会社設立で事業計画書の提出が一律に必要なわけではありません)。


ステップ3:定款の調印・公証

定款はマカオの公証人による署名の公証を受けます。株主・取締役は公証人の面前で署名するのが原則ですが、委任状(Power of Attorney)を用いれば現地を訪問せず、代理人を通じて手続きを完結できます。海外の法人が株主の場合は、本国で委任状や取締役会決議を公証・認証(アポスティーユ等)したうえでマカオに提出します。


ステップ4:商業登記・税務登記

公証済みの定款と関連書類を商業・動産登記局に提出して商業登記を行い、あわせて財政局で税務登記を行います。登記が完了すると、会社は法人格を取得します。

提出書類の例:

  • 公証済みの定款

  • 株主リストおよび身分証明書のコピー

  • 取締役(役員会メンバー)リストおよび就任承諾書

  • 商号登録可証明書

  • 株主が法人の場合:本国の登記簿謄本・取締役会決議(公証・認証済み)


ステップ5:商業登記証明の取得

登記完了後、商業登記証明(会社の登記証)を取得します。


ステップ6:開業申告

開業申告書、株主の身分証明書、商業登記証明、定款、営業税の納付控えなどを揃え、開業の申告を行います。


ステップ7:銀行口座の開設

銀行で口座開設の審査を受けます。多くの場合、銀行指定の印鑑作成を経て、開設まで数週間程度かかります。近年は各国共通でマネーロンダリング対策(KYC)が厳格化しており、事業実態や資金の出所に関する説明資料が求められる傾向にあります。



必要書類(一般的な例)

以下は会社設立(登記)に必要な書類と、その後の銀行口座開設に必要な書類です。


会社設立(登記)の必要書類
  • 公証済みの定款(中国語またはポルトガル語)

  • 株主・取締役のパスポートまたは身分証明書のコピー

  • 株主・取締役の住所証明

  • 会社の登録住所(マカオ域内)

  • 商号証明書(商号予約で取得)

  • 株主・取締役が法人の場合:本国の登記簿謄本および設立を承認する取締役会決議(本国での公証・認証〔アポスティーユ等〕が必要)

  • 海外株主が渡航しない場合:公証済みの委任状(Power of Attorney)


会社名(中国語・ポルトガル語、必要に応じて英語)、登録資本金、事業範囲は設立前に決めておく必要があります。


銀行口座開設の必要書類

口座開設では、設立後に取得・作成した書類が中心になります。

  • 商業登記証明(登記証)

  • 定款

  • 取締役・株主(最終受益者〔UBO〕まで)の身分証明・住所証明

  • 口座開設を承認する取締役会決議、署名権者(口座の取引に署名できる人)の指定

  • 事業実態を示す資料(事業内容、主要取引先、資金の出所など)

近年はマネーロンダリング対策(KYC/AML)が各国共通で厳格化しており、口座開設は設立以上に書類・審査が重くなる傾向があります。事業実態や資金の出所について、銀行から詳細な説明資料を求められるのが一般的です。


設立にかかる期間の目安

会社登記のみであれば概ね3〜4週間、銀行口座開設まで含めると2〜3か月程度が目安です。事業内容や投資家の属性によって審査期間は延びることがあります。



マカオの税制の概要

税目

内容

所得補充税(法人所得税)

M1

事業利益に対して課税。MOP 300,000 以下は3〜9%の累進、超過分は 12%。実際には年度予算で免除枠が引き上げられており、2025年所得分は課税所得 MOP 600,000 まで免除(超過分が12%)。課税年度は1〜12月。

営業税

M8

事業活動に対する定額の税。業種により異なる(近年は予算措置による減免が行われている年もある)。

付加価値税(消費税)

なし

職業税(給与所得税)

M3/M4

従業員の給与に対して課税。

社会保障基金(FSS)

雇用主・従業員がそれぞれ拠出。地元従業員と非地元従業員で負担額が異なる。

 ※M1、M3/M4、M8はマカオ財政局の申告書様式番号(フォーム番号)


所得補充税の免除枠や営業税の減免は、マカオ政府の年度予算によって毎年見直される点に注意が必要です。最新年度の取り扱いは設立前に確認することをおすすめします。


2026年の税制改革:属地主義への移行

マカオの税制で特に重要なのが、新しい「税法典(Tax Code)」の施行です。この法律は2024年12月16日に立法会で可決・同月公布され、主要規定が2026年1月1日に施行されました。改革の柱は次のとおりです。


  • 属地主義(テリトリアル原則)の明文化 — 2026年1月から、課税対象は原則としてマカオ域内を源泉とする所得・財産・消費のみとなり、域外で生じた経済活動には課税されません。それ以前は、マカオ登記法人の全世界所得に課税するのが原則でしたので、大きな方針転換です。

  • 多国籍企業(MNE)への例外 — MNEグループの構成事業体であるマカオ税務居住者については、域外源泉の配当・利子・ロイヤルティ・資産処分益は引き続き所得補充税の対象となります(二重課税を緩和する税額控除あり)。これは二重非課税の防止というBEPS対応の趣旨によるもので、MNE構成事業体でない企業や非居住者はこの対象外です。

  • 国際的な税務概念の導入 — 恒久的施設(PE)、移転価格税制(独立企業間価格)、税務代理人、税務居住者といった概念が正式に導入されました。PEには固定的施設PEと代理人PEが含まれ、マカオで開催する展示会・会議・見本市のための施設もPEとみなされる点に注意が必要です。

ただし、属地主義は税法典の一般規定にとどまり、「何をもってマカオ域内源泉とするか」の詳細な判定基準やガイドライン、申告様式は整備途上です。初期段階では解釈の不確実性が残るため、域外所得の取り扱いについては個別に専門家へ確認することをおすすめします。


香港のオフショア申告との違い

香港では、法人が「この利益は香港域外を源泉とするもの」としてオフショア申告(offshore claim)を行い、源泉を立証できれば利得税が免除されます。2026年にマカオが属地主義へ移行したことで、「域外源泉所得が原則非課税」という点では両者は概念的に近づきましたが、仕組みや運用には依然として違いがあります。

論点

香港(オフショア申告)

マカオ(2026年〜の属地主義)

課税の基本

属地主義。域外源泉の利益は申告により非課税

属地主義。域内源泉所得のみ課税(2026年〜)

適用方法

オフショア申告後、税務局から質問が来る。オフショア申告が適正であることを立証する必要がある

明示的な「クレーム」手続きは未確立

運用の蓄積

長年の判例・税務当局の実務指針が存在

域内源泉の判定基準・ガイドライン・申告様式は整備途上

多国籍企業の扱い

FSIE制度(2023年〜)で一定の受動的域外所得に実体要件

MNE構成事業体の域外受動所得は課税対象(税額控除あり)

 

つまり、「香港のオフショア申告に相当するもの」は2026年の税制改革で実質的に登場したものの、香港のように確立した申告手続きや源泉判定ルールが整っているわけではありません。域外所得が自動的に非課税になると安易に考えるのは禁物で、特にMNEグループ傘下では域外の受動所得が依然課税対象となる点は、香港のFSIE制度と同様に注意が必要です。



設立後の主な義務

  • 年次税務申告:所得補充税の申告が必要です。納税者は「グループA」と「グループB」に区分され、どちらに属するかで申告の手間・必要書類・課税方法が大きく変わります(下記参照)。

  • 会計帳簿の作成・保存

  • 登録住所の維持 — マカオ域内の登録住所が必須です(変更は15日以内に届出)。なお、香港と異なり会社秘書役は原則任意で、必須となるのは株式有限会社(S.A.)や株主10名超の会社などに限られます。


納税者区分:グループAとBの違い

マカオの所得補充税では、納税者がグループAとグループBの2つに区分され、グループAの要件に当てはまらない会社はグループBとなります。実務上、新設の中小企業の多くはグループBに該当します。


グループAに該当となるのは次のいずれかの場合です。

  • 株式有限会社(S.A.)・株式二合会社

  • 形態を問わず、登録資本金が MOP 1,000,000 以上、または直近3年間の平均課税所得が年 MOP 1,000,000 超の会社

  • 多国籍企業グループの最終親会社

  • 適切な会計帳簿を備え、自らグループA編入を申請した会社

上記以外の会社はグループBとなります。

項目

グループA

グループB

課税の考え方

提出した財務諸表に基づく実額課税

業種ごとに定められたみなし利益率に基づいて算定

監査

マカオ登録の会計士による監査が必要

監査は不要

株主総会決議の提出

必要

不要

欠損金の繰越

3年間の繰越が可能

原則不可

申告の作業

重い(詳細な会計・監査が前提)

軽い

 

法人税(所得補充税)の税率はグループA・グループBで同じです(MOP 300,000 以下は3〜9%、超過分は12%。免除枠も共通)。違いは税率ではなく、課税所得の計算方法にあります。グループAは会計上の実際の利益をもとに算定し、グループBは業種ごとに定められたみなし利益率を用いて算定します。

ポイントは、グループBであれば監査なしで申告でき、提出書類も簡素だということです。一方でグループAは実額に基づく課税となり、欠損金を3年間繰り越せるといったメリットもあります。資本金の設定(MOP 100万以上でグループA)に加え、利益が年 MOP 100万超の水準で続くと3年平均の基準によりグループAへ移行します。


香港法人との比較:どちらを選ぶべきか

香港とマカオはいずれも低税率・シンプルな税制を持ちますが、ビジネスインフラ・国際的な銀行ネットワーク・専門家の層の厚さ・対外的な知名度の面では香港が優位です。マカオは税率がやや低い一方、設立・口座開設に時間がかかり、専門家対応も限られます。


  • 香港が向くケース:国際取引のハブ機能、対外的な信用、銀行口座の利便性を重視する場合。

  • マカオが向くケース:マカオ市場そのものへの進出、観光・娯楽関連事業、または特定の事業戦略上マカオ法人が必要な場合。



まとめ

マカオでの会社設立は、低税率・シンプルな税制・自由な資金移動といった魅力があり、2026年の属地主義移行でクロスボーダー投資の拠点としての位置づけも高まりました。海外進出先として良い選択肢の1つと考えられます。

一方で、香港と比較すると設立手続きの複雑さ、現地での署名認証、銀行口座開設のハードルについても考慮が必要です。

マカオ・香港での会社設立や税務についてご検討の際は、専門家にご相談ください。

 


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上の助言ではありません。制度・税率・手数料は変更される場合があるため、実際の手続きにあたっては最新情報をご確認のうえ、専門家にご相談ください。


 
 
 

コメント


bottom of page