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公証とアポスティーユの違い|海外の役所や銀行に書類を提出するとき

11 分前
読了時間: 9分

海外の会社登記や銀行口座開設で、「パスポートのコピーを公証してください」「アポスティーユを付けてください」と言われることがあります。どちらも書類に付ける公的な証明ですが、証明している対象が違います。




公証とアポスティーユは「証明する対象」が違う


公証は書類の署名や写しを、アポスティーユはその証明をした公証人や役所の印を証明します。二つはどちらかを選ぶものではなく重ねて使うものです。


公証

アポスティーユ

誰が証明するか

公証人(公証役場)

国(日本では外務省)

何を証明するか

署名が本人のものであること、写しが原本と同じであることなど

公証人や役所の署名・印が本物であること、署名者がその資格で署名したこと

根拠

公証人法

外国公文書の認証を不要とする条約(1961年ハーグ条約)

アポスティーユには条約で決まった様式があり、「誰が署名したか」「どの資格で署名したか」「どの公印か」が記載されます。英語では Apostille と書きます。


なぜ公証だけでは足りないのか


海外の提出先に、日本の公証人が本物かどうかを確かめる手段がないからです。

実印と印鑑証明の関係と同じだと考えると分かりやすくなります。契約書に実印が押してあっても相手は押された印を見ただけではでは登録された実印かどうか分かりません。そこで市役所の印鑑証明書を添付します。

日本国内なら、受け取る役所や銀行が公証制度を知っており、必要なら法務局に問い合わせもできます。海外の担当者にとっては、日本語の見慣れない印と署名が付いているだけです。そこで、日本政府が「本物の公証人の印です」と証明するのがアポスティーユです。


公証人の印を法務局長が証明し(在職中の公証人が権限に基づいて認証し、押印が真正であること)、その法務局長の公印を外務省が確認してアポスティーユを付けます。アポスティーユ自体は、加盟国同士が条約で受け入れ合うことで効力を持ちます。


書類の種類と使う場所で必要な手続きが決まる


役所が発行した公文書は公証なしでアポスティーユを取れますが、私文書は先に公証が必要です。

書類

例

日本国内で使う

海外(ハーグ条約加盟国)で使う

公文書

戸籍謄本、登記簿謄本、住民票

そのまま使える

アポスティーユのみ

私文書

パスポートのコピー、委任状、宣誓書、翻訳文

必要に応じて公証

公証 → アポスティーユ

私文書には役所の公印がないため、外務省が証明する対象がありません。そのため、公証人の認証を受けて公的な印を付け、その印をアポスティーユで証明する二段階になります。

注意したいのがパスポートです。パスポート自体は公文書ですが、そのコピーは私文書扱いです。日本の公証人は、コピーが原本と同じであることを直接は証明しません。本人が「添付のコピーは自分のパスポートの真正な写しである」という宣言書を作り、公証人の前で署名して、その署名を認証してもらう形(私署証書の認証)を取ります。


公証人が証明するのは署名で、コピーが本物であることは本人の宣言です。ただし、本人確認の際に公証人が原本を確認し、宣言書とコピーは綴じて契印されるため、後からコピーだけを差し替えることはできません。


公証だけでよい場合、アポスティーユまで必要な場合


判断の基準は「どこで使うか」と「提出先が何を求めているか」です。


公証だけでよい主な場合

  • 日本国内で使う場合(定款認証、私文書の認証など)

  • 海外の民間の相手方(銀行や取引先の本人確認など)が、公証済みコピーで受け付けている場合。


弁護士や会計士による原本証明(certified true copy)で足りるところもあります。例えば、香港で銀行口座を開く際は、香港の弁護士や会計士による原本証明(certified true copy)で問題ありません。


アポスティーユまで必要な主な場合

  • 海外の役所や公的機関に提出する場合(会社登記、不動産登記、裁判、ビザ申請、婚姻の届出など)

  • 民間でも、提出先が明示的に求めている場合

どちらか迷ったら、取得前に提出先に確認するのが確実です。公証だけ取って後からアポスティーユを求められると、法務局と外務省の手続きを別に踏むことになります。


日本での取得手順(私文書の場合)


原則は3か所を回りますが、対応地域の公証役場ならワンストップサービスで公証役場だけで完結します。

  1. 公証役場:公証人の認証を受ける

  2. 法務局:公証人の所属する法務局で公証人押印証明を受ける(手数料は不要)

  3. 外務省:アポスティーユを取得する(東京の本省または大阪分室。郵送申請も可)

地域

公証役場で取れるもの

残る手続き

北海道(札幌法務局管区内)、宮城、東京、神奈川、静岡、愛知、大阪、福岡

公証+法務局の押印証明+アポスティーユ(ワンストップ)

なし

埼玉、茨城、栃木、群馬、千葉、長野、新潟

公証+法務局の押印証明

外務省でアポスティーユ

上記以外

公証のみ

法務局 → 外務省

ワンストップは申請者が求めた場合に対応する有料サービスです。予約の際に「提出国と、アポスティーユ付きのワンストップ希望」を伝え、手数料と必要書類を確認しておきましょう。

なお、提出先が現地の日本大使館・総領事館の証明を求めている場合は、ワンストップを使わず法務局の押印証明までにとどめます。外務省でアポスティーユを受けた書類には、現地の在外公館で重ねて証明を受けられないためです。


費用の目安

公証役場の手数料は2025年10月1日の公証人手数料令改正で変わっています。私文書の認証は1通あたり次のとおりです。

書類

日本語

外国語

一般的な書類(宣言書、証明書など)

6,500円

12,500円

委任状

4,000円

10,000円

宣誓認証

11,000円

17,000円

契約書など金額が書かれた書類は、金額に応じて変わります。法務局の公証人押印証明と外務省のアポスティーユは無料です。ワンストップでアポスティーユまで付けても料金は同じと案内している公証役場もあります。


「外国語」は認証を受ける書類の言語で決まる

外国語の料金は、基本手数料に外国文加算6,000円を足したものです。対象になるのは、本人が署名する書類(宣言書など)が日本語以外で書かれている場合です。英語でも中国語でも加算額は同じです。

宣言書を何語で作るかは、提出先の言語要件で決めます。

  • 提出先が英語を受け付ける場合(香港の銀行など):英語で作れば翻訳が不要になる

  • 提出先が他の言語を求める場合(マカオの中国語・ポルトガル語など):英語で作っても翻訳は必要なので、日本語で作って翻訳を付けたほうが安い


ハーグ条約の非加盟国に提出する場合


非加盟国ではアポスティーユが使えず、外務省の公印確認+提出先国の駐日大使館・領事館の領事認証の二段階になります。ワンストップ対応地域では公印確認まで公証役場で済みますが、領事認証は必ず大使館等で取得する必要があります。

提出先が加盟国かどうかは、外務省のウェブサイトに掲載されている締約国一覧で確認できます。


香港・マカオ・中国本土が関わる場合


日本の書類を香港・マカオ・中国本土に出す場合

3地域ともアポスティーユ条約の適用地域なので、日本の外務省のアポスティーユで足り、現地の大使館等の領事認証は不要です。香港は1965年から、マカオはポルトガル統治時代から適用されており、いずれも中国返還後も継続しています。

中国本土は2023年11月7日から適用されました。それ以前は外務省の公印確認と駐日中国大使館の領事認証が必要だったため、古い情報に注意してください。


香港・マカオの法人の書類を日本で使う場合

外国法人が日本で子会社を設立するときの宣誓供述書、取締役会決議、会社登記書類などが該当します。これらは現地で公証を受け、現地の機関でアポスティーユを取ります。アポスティーユは、香港では高等法院、マカオでは法務局(Legal Affairs Bureau)で取得します。現地の日本国総領事館は、現地法人の書類を証明しません。

香港の公証人は、経験を積んだ香港の事務弁護士(solicitor)が試験に合格して任命される資格です。


香港・マカオ在住の日本人が個人の書類を日本に出す場合

相続手続きのサイン証明など、日本の役所や金融機関に出す個人の書類は、現地の日本国総領事館の署名証明や在留証明で足りることがほとんどです。この場合、現地の公証やアポスティーユは通常必要ありません。


実務上の注意点


翻訳の要件を確認する

アポスティーユがあっても、提出先の言語要件は別問題です。たとえばマカオの提出先からは、「公証文言を中国語かポルトガル語で書くか、中国語またはポルトガル語の翻訳を添付すること」を求められることがあります。日本の公証人にこれらの言語での文言を求めるのは現実的ではないため、翻訳を添付します。

翻訳の対象は、宣言書、公証人の認証文、法務局の証明、必要に応じてアポスティーユです。翻訳者の指定がなく誰が訳してもよい場合もあれば、現地の認証翻訳を求められる場合もあるので、事前に確認してください。


提出先に要件を確認してから動く

依頼文に「公証」とだけ書かれ、アポスティーユに触れていないことはよくあります。提出先が公的機関なら、取得前に次のように確認しておくと二度手間を防げます。

Could you please confirm whether the notarized document also needs to be apostilled?


アポスティーユは中身を保証しない

アポスティーユが証明するのは署名や印の真正性です。付いていても、提出先が書類を必ず受理するとは限りません。


まとめ


  • 公証は「書類の署名や写し」、アポスティーユは「公証人や役所の印」を証明する

  • 公文書はアポスティーユのみ、私文書(パスポートのコピーを含む)は公証 → アポスティーユ

  • 海外の公的機関への提出は、ほぼアポスティーユまで必要

  • 東京・大阪などの公証役場ならワンストップサービスで一度に取得できる



コラム:公証人とは?

日本の公証人は、法務大臣が任命する法律の専門家です。全国に約500人いて、約300か所の公証役場で、公正証書の作成や私文書の認証などを行っています。

公証人法には試験で任命する規定もありますが、実際には、裁判官、検察官、弁護士などの法曹資格を持つ人や、法務事務官などとして長く法律実務に携わった人の中から選ばれています。

公証人は国家公務員法上の公務員ではありません。国から給与を受けず、法令で定められた手数料だけで運営しているため、「手数料制の公務員」とも呼ばれます。それでも、文書偽造罪などの適用では公務員として扱われる、公的な立場の人です。


「公証人」という名前でも、国によって中身は大きく違います。


日本

香港

米国

なれる人

法曹資格者や法律実務経験者

7年以上の経験を持つ事務弁護士(solicitor)で、試験に合格した人

簡単な申請で一般の人もなれる

任命

法務大臣

高等法院

各州

米国の Notary Public は銀行員や事務員が兼務していることも多く、日本や香港の公証人とは資格の重みが違います。海外の提出先が、外国の公証人の書類にアポスティーユを求めるのは、こうした違いを個別に確かめられないからです。




参考資料

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